性交タイミング指導 |
卵子が受精できるのは排卵後約24時間、精子に受精能力があるのは射精後48〜72時間です。
この期間に精子と卵子が出会えるよう排卵日を知り、性交のタイミングを合わせていきます。
排卵日は、基礎体温表や超音波検査、頸管粘液検査、尿中の黄体化ホルモン(LH)検査などから予測できます。
一般的に、薬物療法などによる治療と並行して、半年から1年間ぐらい行います。 |
薬物療法 |
『排卵障害』
排卵を誘発する作用のあるクロミフェン剤を、月経開始後より3〜5日目から5日間内服すると脳の視床下部に働きかけ、約2週間後に排卵が起きます。
これを「クロミフェン療法」といいます。
この薬を何周期も連続使用すると頸管粘液の分泌量低下や子宮内膜が厚くならない、というデメリットが生じることもあります。その場合、別の内服薬を検討することもあります。
この療法で妊娠、または排卵に至らない場合、2種類の注射により卵巣を直接刺激する「ゴナドトロピン療法
(hMG-hCG療法)」を行います。
『高プロラクチン血症』
高プロラクチン血症による排卵障害の場合は、プロラクチンの分泌を持続的に抑える薬を内服することで排卵がみられるようになります。
『多嚢胞性卵巣症候群』
多嚢胞性卵巣症候群で肥満を伴う場合には、まず減量に向けた指導が行われます。
治療としてはクロミフェン+hCG療法がありますが、インスリン抵抗性(インスリンの血糖を下げる作用が弱まっている状態)がある場合には、その改善薬(メトフォルミン:保険適用外)を使用する事があります。
これらの治療法で効果が見られない場合、ゴナドトロピン療法が選択されますが、多嚢胞性卵巣症候群でこの治療を行うと、卵巣過剰刺激症候群を起こしやすい傾向があり、十分注意する必要があります。
『黄体機能不全』
黄体機能不全の原因が卵胞の発育不全によるときには、排卵誘発剤により卵胞の発育を促すとともに黄体ホルモン剤により分泌不足を補います。
『頸管粘液分泌不全』
子宮頸管粘液分泌不全で卵胞ホルモンの分泌に問題がある場合は卵胞ホルモン剤を投与します。
『子宮内膜症や子宮筋腫』
軽度の子宮内膜症などの場合には、卵胞ホルモンの分泌を抑制する薬を4〜6か月投与して月経を止め、病巣を小さくする治療をすることがあります。
『造精機能障害』
原因不明のことも多いため、まずはその機能を高めるためのビタミン剤や漢方薬などを服用します。
効果がみられない場合は男性ホルモン(テストステロン)などのホルモン剤を投与します。
『性機能障害』
病態に応じた治療が必要となります。勃起障害(ED)に対しては、薬物治療が中心となります。 |
手術療法 |
『子宮筋腫』
不妊の原因と考えられる場合は、筋腫そのもだけを手術で取り除きます。
大きさや場所によっては、子宮鏡や腹腔鏡の手術ですみますが、開腹手術になる場合もあります。
『子宮形態異常』
子宮形態異常の種類によっては手術の必要がないものや不可能なものもあります。
中隔子宮の場合は、子宮鏡下での子宮形成術が可能です。
『卵管障害』
顕微鏡を用いた手術(マイクロサージェリー)や腹腔鏡を使った癒着の剥離、卵管鏡を使った卵管形成術などが行われます。
『多嚢胞性卵巣症候群』
多嚢胞性卵巣症候群では、卵巣表面に小さな穴を多数あける事で排卵を回復させる、腹腔鏡下卵巣多孔子術が行われる事があります。
『子宮内膜症』
進行した子宮内膜症も手術の対象となります。
腹腔鏡下で行われることも多いですが、重度であれば開腹手術となります。
『精索静脈瘤』
いくつかの外科療法があり、手術を行うと精液所見が改善する場合があります。
『精路通過障害』
通過障害の部位や病態に応じて顕微鏡下手術や内視鏡手術などがあり、閉塞部分を切除して再びつなぎ合わせると自然妊娠が期待できます。
なお、これらの治療に効果が見られない場合には、最終的に精巣あるいは精巣上体からの精子採取術を行うことを検討します。 |
人工授精 |
人工授精は、自然の排卵や排卵誘発剤を使用しての排卵に合わせ、洗浄・濃縮させた精液を人工的に子宮腔内に注入し、受精を促す方法です。
麻酔の必要はなく、精子を注入後15〜30分ほど安静にして終了です。
対象となるのは、精液量・濃度・運動率などが不良の場合、逆行性射精、勃起障害や射精障害、頸管粘液分泌不全、中程度の抗精子抗体陽性、性器の形に問題がある場合、原因不明の機能性不妊などです。
1回の人工授精で妊娠する率は10%前後で、それほど高くはありません。
この方法で妊娠する人は5〜6回くらいまでに成功しており通常は6〜7回くらいを上限として考えます。 |