栃木県不妊専門相談センター
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治療について


 治療には大きく分けて、「一般不妊治療」と「生殖補助医療(ART)」があります。生殖補助医療とは、配偶子(卵と精子)や受精卵(胚)を体外で取り扱う高度不妊治療を指します。こうした技術にたよらない治療法を一般不妊治療といいます。治療は通常、自然に近い方法からより高度な治療法へと段階的に進んでいきます。通院や入院などによる時間的拘束、経済的な負担もあり、また治療した夫婦すべてが妊娠に至るわけではないことから、本人が治療の必要性を納得した上で実施する必要があります。
 検査および治療の順番や中止などは夫婦の状況によって決めることができることから、夫婦でよく話し合いをもち、主治医に希望を伝えることも大切です。

                一般不妊治療

 
 主なものとして、性交タイミング指導、薬物治療、手術療法、人工授精があります。通常、まず、性交タイミング指導から開始し、原因に応じて薬物や手術による治療を行います。一般的に1つの治療法に費やす期間の目安は、約6か月間です。一般不妊治療を約2年間続けても妊娠に至らない場合は、生殖補助医療(ART)へのステップアップを検討する目安になります。

性交タイミング指導  卵子が受精できるのは排卵後約24時間、精子に受精能力があるのは射精後約3日間です。この期間に精子と卵子が出会えるよう排卵日を知り、性交のタイミングを合わせていきます。排卵日は、基礎体温表、超音波検査や頸管粘液検査、尿中の黄体化ホルモン(LH)検査などを行うことで予測できます。薬物療法などによる治療と並行して、半年から1年間ぐらい行います。
薬物療法  ○排卵障害
抗エストロゲン作用のあるクロミフェン剤を、月経開始より3〜5日目から5日間内服すると脳の視床下部に働きかけ、約2週間後に排卵が起きます。これを「クロミフェン療法」といい、何周期も連続使用すると頸管粘液の分泌量低下などかえってデメリットが生じることもあります。この療法で妊娠に至らない、排卵に至らない場合、2種類の注射により卵巣を直接刺激する「ゴナドトロピン療法(hMG-hCG療法)」があります。高プロラクチン血症による排卵障害の場合は、プロラクチンの分泌を持続的に抑える薬を内服することで排卵がみられるようになります。
 ○頸管粘液分泌不全
頸管粘液分泌不全で卵胞ホルモンの分泌に問題のある場合は卵胞ホルモン剤を投与します。
 ○黄体機能不全
排卵誘発剤により卵胞の発育を促すとともに黄体ホルモン剤により分泌不足を補います。
 ○子宮内膜症や子宮筋腫
軽度の場合は卵胞ホルモンの分泌を抑制する薬を4〜6か月投与して月経を止め、病巣を小さくする治療をすることがあります。
 ○造精機能障害
原因不明のことも多いため、まずビタミン剤や漢方薬などを服用します。効果がみられない場合は男性ホルモン(テストステロン)などのホルモン剤が投与されます。
手術療法  ○子宮筋腫
不妊の原因と考えられる場合は、筋腫そのもだけを手術で取り除きます。大きさや場所によっては、子宮鏡や腹腔鏡の手術ですみますが、開腹手術になる場合もあります。
 ○子宮奇形
奇形の種類によっては手術の必要がないものや不可能なものもあります。中隔子宮の場合は、子宮鏡下での子宮形成術が可能です。
 ○卵管障害
顕微鏡を用いた手術(マイクロサージェリー)や腹腔鏡を使った癒着の剥離、卵管鏡を使った卵管形成術などが行われます。
 ○子宮内膜症
進行した子宮内膜症も手術の対象となります。腹腔鏡下で行われることも多いですが、重度であれば開腹手術となります。
 ○精索静脈瘤
いくつかの外科療法があり手術を行うと精液所見が改善する場合があります。
 ○精路通過障害
通過障害の部位や病態に応じて顕微鏡下手術や内視鏡手術を行い閉塞部分を切除して再びつなぎ合わせると自然妊娠が期待できます。また、精巣あるいは精巣上体から精子採取術を行うこともあります。
 ○性機能障害
病態に応じた治療が必要です。勃起障害(ED)に対しては、薬物療法が中心となります。
 人工授精  精子を人工的に子宮腔内に注入する方法です。自然の排卵や排卵誘発剤を使用しての排卵に合わせ、洗浄・濃縮させた精子を注入します。麻酔の必要もなく、注入後15〜30分ほど安静にして終了です。対象となるのは、精液量・濃度・運動率などが不良の場合、逆行性射精、勃起障害や射精障害、頸管粘液分泌不全、中程度の抗精子抗体陽性、性器の形に問題がある場合、原因不明の機能性不妊などです。1回の人工授精で妊娠する率は10%前後で、それほど高くはありません。この方法で妊娠する人は5〜6回くらいまでに成功しており通常は6〜7回くらいを上限として考えます。


                  生殖補助医療(ART)


取り出した卵子と精子を合わせて体外で受精させる「体外受精」と、顕微鏡下で卵子に精子を注入する「顕微受精」があります。通常は、まず体外受精を行って、それでも妊娠に至らない場合に顕微受精を行いますが、不妊原因によっては、初めから顕微受精を行うこがあります。

体外受精−顕微受精
 (IVF-ET)
 卵子と精子を体外で受精させ培養し、できた胚(受精卵)を子宮にもどす方法です。対象となるのは、両側卵管の著しい機能低下があり手術による治療が期待できない場合、高度の男性不妊や免疫性不妊、他の治療法を長期にわたって受けていても妊娠にいたらない場合、機能性不妊などの場合です。
@卵巣刺激
効率よく治療を行うために、一度の治療で複数個の成熟卵子を受精させ、培養することが必要です。通常、卵胞を刺激するために排卵誘発剤を使用します。一般的な方法として、まず、排卵時期をコントロールするためにGnRHアゴニスト製剤を鼻腔にスプレーし、続いてFSHまたはhMG製剤を連日注射します。卵胞の大きさを確認し、十分成長した段階で、GnRHアゴニストを中止し、hCG製剤を注射し排卵直前の状態にします。
A採卵術

採卵はhCG投与後35〜37時間後くらいに行います。通常、静脈麻酔や局所麻酔が用いられます。経膣超音波の機械を使用し、両側卵巣の卵胞を穿刺し、卵子を卵胞液ごと1個ずつ吸引します。その中から顕微鏡を使って卵子を見つけだして洗浄し、シャーレの中で培養します。 採卵後は2〜3時間体を安静にします。
B媒精(ばいせい)と培養
精液は採取して、運動精子効率よく回収し、培養液の中で卵子と一緒にします(媒精)。受精は自然にまかせ、15〜20時間くらいで受精し、正常な受精卵はさらに培養を続けると分割を始めて胚になります。
C胚移植
媒精後48時間くらいで4〜8細胞の胚になります。その中から質の良いものを選び出し、柔らかく細いカテーテルに入れ子宮内に注入します。多胎妊娠を避けるために日本産科婦人科学会のガイドラインでは、移植数は原則1個とされています。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠に至らなかった女性などについては2個の移植が検討されます。移植後は着床を助けるためにhCG製剤やプロゲステロン製剤の注射を行い、2週間後の妊娠判定を待ちます。移植後は普段通りの生活ができます。
良好な胚がたくさんできた場合は凍結保存し、次回の胚移植に使うことができます。  
 胚盤胞移植  通常の体外受精−胚移植より受精卵を長く培養し、胚盤胞と呼ばれる着床直前の状態にまで育った胚を移植する方法です。
 顕微授精  顕微鏡をみながら卵子に精子を人工的に注入して授精させる方法をいいます。顕微授精の方法の中で主流となっているのが、卵細胞質内精子注入法(ICSI)です。顕微授精は精子が極端に少なくても受精が可能なので、重症の男性不妊が対象となります。また、精子や卵子の受精能力に問題がある場合も対象となります。卵子を体外から取り出す方法や培養、移植は体外受精と同様ですが、運動能力に欠ける精子も利用できるのが体外受精と異なる点です。


                   治療のリスク


治療を受ける際には、十分な説明を受け、リスクも納得した上で受けることが重要です。

排卵誘発剤による副作用  薬自体の作用・副作用に加え、妊娠後の初期流産が多いこと、また、重大な副作用として卵巣過剰刺激と多胎妊娠があります。生殖補助医療を行う際には強力な排卵誘発を行いますので特に注意が必要です。一般的には、排卵誘発剤を10日前後投与しますので、連日通院が必要になり時間的な拘束が生じます。
○卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
安静だけで改善する場合もありますが、入院管理が必要なことがあります。きわめて重症な場合は胸水や腹水がたまり、腹痛、呼吸困難、血液濃縮や電解質異常をきたして、血栓症をおこしたり生命にかかわることもあります。使用に当たっては医師も十分に注意しますが、排卵誘発中に下腹部の不快感やふくらんだ感じ、下腹部痛があったときにはすぐに医師に伝えましょう。
○多胎妊娠の危険性
日本人の双胎(ふたご)率は約1%(100妊娠に1例)ですが、排卵誘発剤を使用するとその発症率は高くなり代表的な治療法であるhMG-hCG療法では約20%との報告もあります。三胎(みつご)以上の確率も高くなり、三胎以上では双胎よりもさらに早産、低出生体重による周産期死亡率(生まれてきた赤ちゃん千人に対して、妊娠22週以降の死産と生後7日未満の新生児死亡を合わせた人数の割合)の増加がみられます。母体にも妊娠高血圧症候群、切迫早産、羊水過多等による危険があり、妊娠継続自体が難しくなるケースもあります。
体外受精  採卵時の出血や麻酔のトラブルなどが起こる危険性があり、卵巣過剰刺激症候群、多胎妊娠の起こる可能性も高まります。
顕微授精  重症の男性不妊にも妊娠の可能性をもたらしましたが、無精子症や重度な乏精子症は染色体異常や遺伝子異常が原因であることが少なくありません。顕微授精によって本来なら自然淘汰されるはずの精子が使われれば、子どもに遺伝することも考えられます。これらの問題も理解した上で選択する必要があります。




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